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2014年2月14日 (金)

アルコール対策基本法 国を挙げて支援充実を

飲み過ぎによる社会的損失は年間4兆1483億円で酒税の3倍、死亡者は3万5千人にも上る。厚労省研究班がこんな試算を出している。思いも寄らぬ数字が示す通り、事態は深刻で国も「アルコール健康障害対策基本法」を先の国会で成立させた。アルコール依存症に苦しんできた患者や家族、支援者にとって長年の夢だった法律で、国を挙げて飲酒の弊害を防ぎ患者支援の充実を図る姿勢が示された意義は大きい。

 適度な飲酒は生活に豊かさと潤いを与えてくれる。「酒は百薬の長」という言葉があるように、食欲増進や血行改善といった体への効用、さらに人とのコミュニケーションを円滑にする効果もある。しかし、度を越した飲酒は心身の健康を損なう。最たるものが、酒の飲み方を自分の意思でコントロールできなくなる精神疾患、アルコール依存症だ。

 習慣的な飲酒を続けるうちに徐々に酒量が増え、アルコールに病的な欲求を持つ「精神依存」という状態になる。やがてアルコールが切れると手の震えや睡眠障害、吐き気、幻聴などの禁断症状が出るようになる。すると今度は、不快な禁断症状を止めようと酒を飲み、ますます悪循環に陥っていく。

 健康問題ばかりではない。飲酒運転で検挙された男性の約5割、女性の4割は依存症の疑いがあるという。また深刻なドメスティックバイオレンス(DV)の3割、刑事処分を受けたDVの7割近くが酒を飲んでの犯行だった。

 こんなアルコール関連の問題を抱える人は思った以上に多い。何らかのアルコール関連問題を抱える人は国内に654万人いるとされる。このうち治療を要する依存症患者は80万人いるが、実際に治療を受けている人は年間4万人にすぎない。

 予防や治療などはこれまでも、それぞれの分野で続けられてきた。県内では国立病院機構「肥前精神医療センター」(吉野ケ里町)が全国的に有名で、先進的な取り組みを進めている。例えば日本酒換算で毎日3合以上の飲酒を続ける「多量飲酒者」の治療プログラムを開発した。

 県も依存症対策や相談業務は障害福祉課、予防は健康増進課、飲酒運転防止は県警などそれぞれが施策を進めてきたが、一体的な取り組みとなってきたかというと疑問符が付く。

 このため基本法で国や自治体、医療関係者などの責務を初めて明記し、対策を総合的かつ計画的に推進することがうたわれた意義は大きい。これから政府が基本計画を策定し、これに基づき、都道府県がそれぞれの実情に沿った推進計画をつくる。

 既に内閣府には対策推進準備室が設置されたが、健康障害の発生や進行、再発を防止するための健康診断や保健指導、専門医療の充実、飲酒運転や暴力行為の当事者への指導、患者や家族の相談支援、社会復帰支援など検討事項は山積している。関係機関も多く調整は難しいが、遅滞なく作業を進めてほしい。

 アルコール依存症は病気だが、日本では「意志が弱い」といった人格の問題と誤解され、治療を阻む壁となってきた。その意味では正しい知識を身に付けることが求められるし、学校現場での教育も欠かせない。

佐賀新聞の論説(澤野善文)

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