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2014年3月23日 (日)

鳴潮【徳島新聞】<社説>■不作為犯

 恥ずかしいから写真は勘弁して、と言われることはたまにある。しかし、鏡巧さんのようなケースはまれだ。「写真はええけど、名前はあかん」。2001年、岡山県の国立ハンセン病療養所・長島愛生園で初めて会った

 日米開戦の前年、12歳で入所した。「顔なんか誰も覚えとらん。でも地元の新聞に本名はなあ」。入所が知れ、身内まで差別されてはたまらない。ほんの10年余り前まで、元患者の多くが同じ心配をしていた

 国家賠償訴訟の原告の一人だった。愛生園は歴史的に国の隔離収容政策の牙城の一つ。「世話になっているお国に歯向かうのか」と、園の内外から罵声を浴びた

 戦後、治る病気となったのに、家族も名前も奪われたまま。こんな不合理、差別が許せるか。精いっぱい耐えた。勝訴するや、社会の空気は一変した。体調を崩して入っていた園の病棟でこの正月、そんな話を久しぶりにした。「野垂れ死にしたかもしれんが、一度は自分の力で生きたかった」

 前半生、自分としては、満足に闘えなかったと反省して詠んだ歌がある。「予防法に縛られしままの五十年不作為犯にて過ししものか」

 不作為犯。すべきことをしないことで成立する罪。それは無関心だった社会の方だろう。故郷を思って涙したかつての小学生が歩いた長い道のり。享年85。十分に闘った。

【福島民報】

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