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2014年7月16日 (水)

「責任先送りのための起訴」という暴挙・郷原信郎


昨日、当ブログの【「前代未聞」の検察の判断を待つ藤井美濃加茂市長事件】で、勾留満期での検察の判断に、「証拠を無視した起訴」と「現職市長を逮捕しながら処分保留・釈放」という二つの可能性があるが、いずれも「前代未聞」だということを述べた。
本日、名古屋地検は、前者の判断を行い、藤井市長を受託収賄、事前収賄、あっせん利得処罰法違反で起訴した。
上記ブログでも述べたように、藤井市長が、現金の授受を一貫して全面否定し、会食の場に同席していたタカミネ氏も、席をはずしたことはなく、現金の授受は見ていないと供述している以上、賄賂の授受の立証が到底無理だということは、常識で考えればわかるはず。それなのに、なぜ、「あらゆる刑事事件を、法と証拠に基づき適切に処理しているはずの検察」が、このような事件での起訴という暴挙に出るのか。
それは、現職市長を逮捕した事件だからこそ、処分保留・不起訴にすることは、警察幹部、そして、その逮捕を了承し、勾留請求をした検察にとって、重大な責任問題になるからだ。いくら公判立証が困難であっても、無罪の可能性が高いと思っても、現時点で、現職市長逮捕が見込み違いであったこと、間違いであったことを認めるよりは、ましだからだ。
現在の名古屋地検の検察幹部にとって、今回起訴した事件が無罪になったとしても、その判決が確定する頃には、検事正も次席検事も異動になっており、責任を問われることはない。一般的に判決が確定する3年先ぐらいには、検事正などは退官しているかもしれない。そうである以上、現時点で大変な責任問題を生じさせることになる不起訴処分を行わないのが賢明ということになる。
企業の世界であれば、経営者が事業上の判断を誤った時、早期に判断の誤りを認めて、会社の損失を最小限にとどめるための意思決定が行われるようにするのが、取締役会、監査役などによるコーポレートガバナンスのシステムだ。それが機能していないと株主が重大な損失を被ることになる。
検察の意思決定のシステムは、一度行った判断が誤りであった場合、その誤りを認めて「引き返すこと」が社会全体に生じる損失を防ぐことになる。本件であれば、美濃加茂市長個人だけではなく、美濃加茂市民に重大な不利益を与えることを防ぐことになる。しかし、検察組織では、その時点の幹部の責任回避のために、個人や社会に重大な不利益を生じさせることになるような判断が行われることを防ぐシステムが機能しない。検察のガバナンスの重大な欠陥だ。
今回の起訴のような暴挙が行われないよう、重大事件における検察の意思決定についてチェックシステムを確立しないと、検察改革で打ち出された「引き返す勇気」は絵空事になってしまう。
長谷川充弘検事正には、この事件の公判の決着がつくまで異動させず、名古屋地検に「塩漬け」にしてもらいたい。このような「証拠を無視した起訴」をしたことの責任をきちんととってもらわなければならない。

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