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2014年8月 2日 (土)

コラム:ユーロ圏危機は本当に終わったのか


Hugo Dixon
[ロンドン 28日 ロイター] - ユーロ圏の政策当局者がこの夏はくつろげると考えているとすれば、それは重大な誤りだ。ユーロ圏危機は休眠中であり、死んだわけではない。
ユーロ圏は景気停滞、低インフレ、高失業率、そして債務に苦しんでいる。ショックに耐えられる態勢を整えていないため、危機はささいな一撃によってその恐ろしい頭をもたげるだろう。
そうした一撃がどこから到来するかは想像に難くない。ウクライナでのマレーシア航空機撃墜を受け、ロシアとの関係は急速に悪化した。欧州が制裁を科し、ロシア政府が対抗措置を採れば、これまたユーロ圏経済の痛手となろう。
ユーロ圏は惨事から身を守るための対策が必要だ。欧州中央銀行(ECB)はインフレ率を押し上げるために追加金融緩和を実施し、各国、特にフランスとイタリア、そしてドイツも構造改革にあらためて力を入れ、緊縮財政路線はある程度緩めなければならない。
しかしまずは問題に目を向よう。ドラギECB総裁がユーロ防衛に手を尽くすと宣言して以来の2年間というもの、金融市場は落ち着いている。しかしユーロ圏経済はほとんど成長していない。国際通貨基金(IMF)は先週、ユーロ圏の今年の成長率が1.1%にとどまるとの見通しを示した。先立つ景気後退の厳しさに照らせば、スズメの涙ほどの回復である。
確かに明るい側面もある。スペインは徹底的な労働市場・金融システム改革を有効に実施した結果、緩やかな景気回復を享受している。ギリシャでさえ冥界から蘇りつつあるようだ。
しかし大国の動向はぱっとしない。IMFによると、イタリアの今年の成長率は0.3%にとどまり、フランスは0.7%成長。ドイツは1.9%とましだが、ユーロ圏の成長エンジンたる同国ですら勢いを失っているように見える。IFO経済研究所の7月ドイツ業況指数は3カ月連続で低下した。
一方、ユーロ圏のインフレ率は0.5%で、2%弱というECBの目標を大幅に下回っている。こうした「ローフレーション」は2つの悪影響をもたらす。ユーロの高止まりを招いて輸出業者を圧迫するとともに、債務負担を重くするのだ。
イタリアの債務はことし、国内総生産(GDP)の135%に達すると欧州委員会が予想しており、最も心配だ。成長率とインフレ率が上昇しない限り、これほどの債務水準は持続できない。2兆1000億ユーロという債務額を考えると、返済難に陥った場合の余波は甚大なものになろう。債務が制御不可能になるという懸念を払しょくするため、イタリアは民営化計画を強化する必要がある。
ユーロ圏の一部政治家、とりわけフランスの政治家は金融・財政政策の緩和が解決策だと考えているようだ。これはある程度まで正しい。
金利はこれ以上下げられないので、ECBは決然と量的緩和に踏み出す必要がある。ユーロ圏の資本市場は概ね未発達であるため、量的緩和の手法は国債の大量購入になる。これはインフレ率の上昇と為替レートの低下という2つの恩恵をもたらすだろう。
真剣に構造改革に取り組んでいる国に対し、欧州委員会が財政赤字目標の達成期限に猶予を与えることも非常に有効だ。こうしたアプローチはスペインにおいて功を奏した。同国は改革遂行中、2度にわたって財政上の猶予を与えられている。しかし猶予期間は増税回避に使われるべきであり、公的支出削減の手を緩めてよいということではない。
その上、金融・財政政策の緩和のみに頼る策は、効果よりも弊害の方が大きいだろう。政府に改革を迫る圧力が弱まる。危機の再発は先送りされるかもしれないが、防げはしない。そして再発時の勢いは凄まじいものになろう。
最も心配なのはフランスだ。オランド大統領は公的支出の抑制、労働市場の自由化のいずれについても、ほとんど手を打っていない。バルス首相は経済改革に取り組んでいるが、大統領、社会党、そして国からの全面協力が得られていない。イタリアは少なくとも改革の必要性を理解しているし、改革断行の意志を持つレンツィ首相がいる。
オランド大統領は現在、モスコビシ前経済・財政相を欧州委員会の経済担当委員に推している。欧州委がフランス政府に改革を迫り続ける必要性を考えれば、委員の中にフランス政界の人物を滑り込ませるのは間違いだろう。
対照的に、スペインのデギンドス経済・競争力相を、ユーロ圏各国の財務相を束ねるユーログループの新議長に据えるのは良案だ。スペインは構造改革に成功したのだから、同国の経財相は構造改革の価値を仲間に説くのに最適の立場にある。
スペインの教訓はドイツにとっても心すべきものだ。ドイツは21世紀初頭に労働市場を改革したが、それ以降は成功に胡坐をかいている。優先課題はサービス市場の開放だ。そうすれば、ドイツの消費者の選択肢が広がると同時に、他の欧州諸国の納入企業にも市場が開かれ、これら国々の成長を助けるという二重の利点がある。
各国政府が構造改革に猛進する用意があるなら、欧州委員会が財政赤字達成期限に猶予を与えるだけで終わらせてはいけない。ECBも喜んで量的緩和に踏み切るべきだ。政策当局者は夏休みを使い、これら3要素を含む包括策で合意してほしい。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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